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「...。」
ひりひりする頬をおさえて、先ほど自分がおかした失態を悔やんだ。(パニックだったからって俺、馬鹿だろ。)かっこ悪いにもほどがある。
あのあと当たり前のように女風呂を追い出された俺は、男風呂に入って冷水をかぶり頭を冷やした。
(どうすればいいんだよ...)
完全に心を怒らせた。きっと嫌われた。人生ではじめての告白だったのに、俺馬鹿じゃねえの。いっつもされる側だったから、する側の気持ち、今初めて知った。
すごく、怖い。今までの関係が崩れるかもしれないし、嫌われるかもしれない。ギクシャクするのも嫌だ。不安で胸がいっぱいになる。
「ああああー!」
なんだよこれ。気づかなければよかった!ほんとやばい。心のことで頭いっぱいだ。鏡にうつる自分の顔は赤くて、不安そうな顔で、かっこわるかった。急にイライラしてきてばしゃん!と勢いよく湯船に入った時、ガラと扉が開く音が響く。
視線を向ければ、そこには今日学校を休んだ乃木がいた。
彼は俺に見向きもせずに入ってくる。
(うわー、鍛えてんのかな。腹筋割れてる。)
無意識に見つめていたらしい。俺の視線に気づいた乃木が「なんやねん」と鬱陶しそうに言い放つ。
「いや、別に。」
「なら見んなや。」
「ああ、ごめん。」
沈黙。
「...。」「...。」「乃木、今日学校休んだのか?」「用事あった。」「そっか。」もう一度乃木に視線を戻すと、首筋のところに赤い痕がいくつもあることに気づいた。え、あれって、キスマーク?乃木、お前心の事好きなんじゃなかったのかよ。用事って、そういうことしてたのか?


