小さい時からそうだった。感情が高ぶるとまわりが見えなくなる。俺の悪い癖だ。
Bクラスに入ると、心は楽しそうに薫(かおる)と話していた。かおるとかおりは同一人物なのだと実感する。
「心!」
「あ、理来。」
不思議そうな表情でおれを見上げた彼女は会話をやめて、「どうしたの?」と聞いてきた。少し戸惑っているのはさっき俺がイライラしてたのを感じとったからかなぁ、とか頭の隅で考えながら口を開く。
「薫は俺の従兄弟なんだ。」
「知ってるよ。」
「佐倉君、もうすぐ授業始まるけど。」
食べていたガムをぷくーと膨らまして薫は言う。
「どうせ佐倉君のことだから俺と心ちゃんが仲良くしてるのが気に食わないんでしょ?」
「…。」
「俺心ちゃんのこと好きだから、佐倉君になに言われようと離れないよ。」
「ちょっと尾花さん!」
薫はにやりと口端をつりあげて笑った。俺はいらいらして無理矢理心の腕を掴むと、無意識に有り得ない言葉を発していた。
「俺も心が好き(らしい)だから、お前には譲らない。」
その発言に心はぽかんとした。まだ休み時間ということもありクラスは騒がしかった。内心まわりに聞かれないでよかった、と思う。
「ぶ、はははは!!」
「何笑ってんだよ!」
「じょーだんだよ冗談。俺は心ちゃんのこと、なんとも思ってないし。まあ、友達だとは思ってるけど…まさか佐倉君が告白するなんて思ってなかった。」
ほら、どうするの心ちゃん。と楽しそうに放心状態の心に問う薫。
「え…と、あの…。」
「いや、今の幼なじみ……」
幼なじみとして、と弁解しようとしたが、途中でやめた。幼なじみとして好きなんじゃないって、気づいたから。
でも、
「今の告白は、気にしなくていいから。」