尾花さんが女子トイレから出ようとしたときにちょうど生徒がトイレに入ってきた。
「さ、さささささ佐倉君!?なんで女子トイレに!?し、しかも女装っ、」
女子生徒はパニック状態である。無理もないだろう。あの男女から人気のある理来が女子トイレから女子の制服を着てでてきたのだから。
「ちょっと趣味で。」
尾花さんが完璧な笑顔を浮かべてそう言うと、女子生徒は顔を真っ青にして教室に戻って行った。
「ちょっと尾花さん、」
「保健室から男子の制服借りてきてよ。」
「え!?もうすぐ授業始まるし「あと5分あるから大丈夫だろ。それとも、幼なじみの顔した俺に、この格好で歩いて欲しいの?心ちゃんの幼なじみは傷つくだろうなぁ。女装趣味の変態っていうレッテルがはられるんだから。」
それはあんたでしょ!と言おうとしたとき、尾花さんに背中を強く押されて「早く行ってこい。」とドスの効いた声で言われた。
…こんなの有り得ない。
私は渋々保健室に向かう。1時間目はたしか現代文だ。
ただでさえ初日の授業をサボってしまったために先生に目をつけられているのだ。遅刻はしたくないし、これ以上目立ちたくない。
泣きたくなるのをこらえて、私は全速力で廊下を走った。