「何言ってるんだ!無理に決まっているだろ!あそこは何時崩れるかわからないし危険だ。」
その危険な場所へ心を向かわせたのか。
けれどここでキレるわけにはいかない。
最終手段を使おう。コンプレックスでもある容姿を使うなんてやだけど。
「…せんせい、」
上目遣いで担任を見上げ、彼の服を掴んで頬を赤くさせた。
「俺、旧アパートがいいんです。」
「しかし、」
「お願いします…!」
すると担任は うっ と声を詰まらせてがっくりと肩をおとし、渋々頷いた。
それを見るなり俺は何時もの表情に戻し、口元をつりあげて笑う。
「ありがと、センセ。」
この時、まわりが頬を赤くしていたことには気づかなかった。
とりあえずゆっくりするのはもう少し先になりそうだ。担任から旧アパートの場所を聞くと、そこにむかって歩き始めた。


