「日向」
座っていたはずの京介が、すぐ後ろにいた。
「ちょっ……京」
背中越しに感じる京介の体温。
なんでこんなことするの…!
「さっきも言ったけどさ、やり直そ」
「やっ…ダメ」
私のお腹の前で組まれた京介の腕。
ちゃんと鍛えたんだ…
いつか私がテレビの体操選手を見て、そんな話になったよね。
「高校のとき、別れじゃなくてもっと他の方法でもできたと思うよ。だけどっ」
ギュッと京介が力を入れた。
「今、私誰かと付き合うとか…よく分かんないよ…」
そう言うと、京介は私を向かい合わせ
いつもの角度で私にキスをした。
知ってる、この感覚
いつの間にか背中に手がまわっていて、京介が深く私に侵入してくる。
「ダメ…やめっ…」
ふと我に返ると、やっぱり断ってしまう。
自分でも分かんないんだよ。
「なんで」
耳元で京介が囁いた。
この声も弱かったな…。
流されちゃうよ……
「僕のこと嫌い」
私は小さく横に首を振った。
「好き」
私の口はそう言葉を紡いでいた。
シュンシュンシュンとお湯の沸く音がして、私はそっと京介のそばを離れた。
「飲み物なんてもういいよ」
火を止めた私の手を引っ張り、ソファーに私を横たわらせた。
「好きだ」
そう甘く囁いて
京の言葉に、私の頭はどんどん麻痺していくのだった。

