「ねぇ、サトシ。バレンタインはどうする?」
二月に入ってすぐのころ。
その質問を投げかけるとき、内心緊張していた。
「平日だから、仕事帰りにドライブでも行こうか。それで、どこかで食事をしよう」
携帯の向こうから届いたサトシの返事に、胸をなでおろす。
サトシはバレンタイン当日、ちゃんと私と過ごしてくれるようだ。
ももちゃんではなく、私と。
電話を切ると、壁のフォトフレームに目を向けた。
実は、サトシにあげたあのフォトフレームと同じものを、自分用にも買ってあったのだ。
サトシは知らない、密かなおそろい。
四枚の写真は、サトシの部屋のフォトフレームに入れたのと同じものが入っている。
冬の写真は、北海道で撮った写真とスノボで結衣子さんが撮ってくれた写真のどちらを入れようか迷った末、スノボの写真を選んだ。
いつかシャンパンスノーのスキー場に行ったら、その時その写真に入れ替えるつもりだ。
ベッドに仰向けに寝転がると、ハート型のクッションを抱きしめて息をついた。
それから、サトシの言葉を頭の中で復唱する。
「平日だから、仕事帰りにドライブでも行こうか。それで、どこかで食事しよう」