何処に行くのだろう。


前を走る男は改札口を抜けた後、ホームへは向かわず

そのまま売店が並ぶ駅の中を走り抜ける。


まだ10時で駅には人が沢山居たけれど
走っているあたし達を気に止める様な人は居なかった。


端から見れば目的地に間に合わず、急いでいるカップルにしか見えないだろう。


先程のやり取りを聞いていなければ。



まあ、これだけ周りに人が居るんだし
いざとなれば大声で叫べば何とかなる筈。


そう考えたあたしは、男の奇怪な行動の様子を窺いながら暫く従う事にした。