驚いて、あたしの腕を掴む誰かを見遣ると。



「っ」


男だと言う事は確認出来た。


でも、



「誰!?」



叫ぶ様にして問い掛けると、一気に周りの視線が此方に集まる。



男はサッと辺りを見回すと、


「…お願い、走って」



そう言ってあたしの腕を掴んでいる手に力を込めた。



「だから、だ…」



その要望に納得行く筈も無く、今一度
男が誰であるのかを確認しようとするあたし。



でも男はその言葉を最後まで聞いてはくれなかった。