周りを見回すと、電車の中はがらがらで
もう誰一人乗っては居なかった。



最後に目に映していた目の前の座席に座っていたサラリーマンも、

その横に座ってカチカチと携帯を弄っていた若い青年も、もう居ない。



どうやらあたしが眠っている間に停まった駅で降りたらしかった。



「……、」


無言で俯くあたしの手を掴んで座席から立たせると男は扉へと歩き出す。



「ほら、早く降りないと運転手も駅員も困るだろ」



…確かに。



小さく頷いて、大人しく続いた。