「とは言え芳しい状態とはとても言えないので

面会時間はほんの少しになりますが…」



……。



「充分です」


時間の長さなんてこの際関係無い。


要は架に一目会えるか。

それだけだったから。



「では私はこれで失礼致します。
何かあれば枕元のナースコールボタンを押して頂けますか?」


「はい、分かりました。

有り難う御座います」


看護師さんに向かって深くお辞儀をする。

顔を上げた時には看護師さんは既に背を向けて歩き出していた。


あたしは看護師さんの後ろ姿が廊下の向こうへ消えるまで
じっ、と見つめた後架の居る特別室の扉をノックした。


コンコン、コン…



「任谷いちるです」


一応、名乗ってからゆっくりと扉を開けた。