病院から外に踏み出した瞬間、あたしは駆け出した。
セミロングの髪が風で後ろへと戦ぐ。
昨日から履き歩いたサンダルは気が付けば足に靴擦れを作っていた。
体力も疲労で限界だったけれど
それでもゆっくりなんてして居られなかった。
痛む足も汗でベト付いたワンピースも気にしている暇なんか無かった。
“絶対に見付けなきゃ”
”絶対に手術前の今日、架に渡さなきゃ”
頭の中はその事だけだった。
初夏の風が頬を撫でる。
闇夜を滑る様に息を切らせて走る。
今だけは主人公。
主人公は諦めたりしないんだ、どんな状況に追い込まれても、挫折してもまた立ち上がるんだ。
あたしだって、諦めない――!