不意に架の腕が緩んで、羽交い締めから解放されたあたしは
再び架に右手を掴まれた。
「次行くよ」
「あ、うん…」
斜め前を早足で歩く架は前を向いたままで
顔が見えないから表情が分からない。
「架」
「何?」
「可愛いなんて言ってごめんね」
「本当だよ、男に可愛いなんて」
「……。」
「なんて、現場でも先輩の方によく言われるんだけど」
「そ、そうなんだ」
そっか、やっぱりあたし以外にもそう思う人居るんだね。
「架、怒ってる?」
「全然」
じゃあ何で。
「さっきからこっち向いてくれないの?」
架が怒ってるなら謝りたい。
そう思ってあたしは素早く架の前に回り込んだ。