「この服このままください」


架はあたしの腕を強引に引いてレジの前まで連れて来たかと思うと
素早くワンピースのタグをバーコードに通して貰い、

あたふたとしているあたしを他所に会計を済ませてしまった。

「彼女さんにプレゼントですか?」

「あ、そう見えます?」

「ちょっと!かけ…」


明るい店内で“架”なんて呼んだらいくら帽子を深く被っているとは言え気付かれてしまう…!


咄嗟にそう判断したあたしは架の名前を呼べずにただ口をぱくぱくさせたり首を横に振るしか無かったのだが。


「ま、良いじゃん。
俺からのプロデュース記念って事で」

架はへらっと笑うとそのまま、また歩みを進める。


「でも、こんな高い服…」


会計をしている時うっすらと見えた金額。
それは万単位の値段だった。