男は真っ黒だった。 と言うのも、比喩的表現で。 男の顔はよく見えない。 頭から深く帽子を被っていて、黒いシャツに黒いズボン、黒いスニーカー。 左手首には黒いリストバンド。 全身を黒で固めていた。 やばい、益々怪しい人に見えてきた。 「あの、用が無いなら、 あたし、もう行きますね」 笑顔を作って、ゆっくりと後退る。 と、 「いちるちゃん」 目の前の男は、ぼそりとそう呟いた。