ふたりの手元には難しそうな書類がたくさんあったから。
彼の態度や状況からも言っていることは間違いないのだろう。
でも。
でも。
呆然とするアタシに彼女は言った。
「お邪魔みたいだし、
今日は帰るわね。
この仕事の件はまた京都を発つ前に話、
聞いて?」
そう言って彼女は立ち上がりアタシのほうへやってきて笑う。
「どうするか決めた?
来週、東京へ帰るからその日までにね?」
彼女は耳打ちした。
「あの…っ」
「忘れたの?
こないだ言ってた例の件」
わかってる、わかってる、そんなこと。
彼を譲れって言ってた、
あのこと。
忘れるわけない。

