「……いるよ」 ――っ。 胸が痛い。 一瞬血管が狭くなって、じんわり痛くなって、またすぐに元に戻った。 「…へぇ、誰?」 なるべく平然さを装う。 なぜだかは分からないけど。 「…内緒」 「え?」 「律、明日大会頑張ってね! ばいばい」 希衣は俺に背を向けて歩いていった。 「……」 一気に力が抜けた。 …内緒、か。 知りたいけど、 やっぱり知らなくてよかった。