気配なんて全然なかった。 あたしに近づく男に、ゴクッと生唾を呑んで構える。 厚い唇が特徴的。 何も話さずに距離だけが縮まる。 すると、どこからか入り込んだ風である匂いが漂う。 あ...... 懐かしくて、一瞬にして昔のことが思い浮かぶ。 どうして...... どうして、気付かなかったんだろう。