顔を逸らして、小さく深呼吸した司。





「俺、子供のときから椎の隣が嫌だった」




昔を思い出すように、遠くを見つめている。




それを黙って、何も言わずに聞く。




「業界にも有名な姫宮の長男だから、いつも見比べられていたんだ。金魚の糞って」




自嘲するように笑う。




「俺は何も悪くないのに。誰も悪くない。身分って何だよ。格って何だよ。金持ちと一緒にいることが、そんなに利用してるように見える?」




苛々していて、話すスピードは増す。




そう言えば、初等部のときの司はどこか遠慮がちだった。





初等部から一緒にいるのに





あたしは、何も気付いていなかった。





何も知らなかった。