ポケットの中から出したケースを握る。





そして、勇気を出して後を追う。





「―――――ほいっ」




ポケットの中に手を突っ込んでいて、出来た隙間にケースを滑らせる。





それに驚いている椎を置いて、追い抜く。





「これって、バレンタインチョコ?」




椎の手には、高かったトリュフチョコ。




「義理よ、義理!」




玄関のドアを開けながら、顔を見せずに言う。




すぐにドアを閉めた。





「たっく...」




フッと嬉しそうに笑っていたことには気付かずに。