「顔を上げてください」 その優しさは、すごく嬉しかったし。 やっぱり、綺麗な顔立ちしてるなぁ。 こんな人に産まれたかった。 自分の顔を嫌がるわけじゃないけど。 「...やっぱり、優しいのね歩ちゃんは」 「え...?」 穏やかに微笑み、あたしの名前を言った。 どうして? 名前を教えていないのに。 不思議に思っていたあたしに、彼女が慌てて口火を切る。 「あっ、いきなりごめんねっ。覚えてないかな、少し前に一度だけ逢ったのを...」 少し前に逢った? 記憶を辿っていく。