「それは...」 顎をクイッと持ち上げられる。 ぶつかる視線。 何も話せなかった。 ううん、話す言葉が浮かばなかったんだ。 「こんな色のグロス、似合わないからだよ」 親指で、唇に塗られたグロスを拭き取る。 「あ......」 「歩はそのままでいいよ」 口角を上げて、優しい瞳があたしを見つめる。 スーツのせいかな...。 椎がこんなに格好良く見えるのは。