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『ハルカさま』

幼い子供の声が聞こえる。

『あのね、ハルカさま』

弾んだ声で呼び掛ける子供。

__ああ、そうか。
これは夢だ。

『さっき、お母さまに教えてもらったんです。おまじない。
唱えると、きっと良いことがありますよ』

ずっとずっと昔の記憶。
まだ、母が生きていたときの話だ。

俺の母と共に、自分の両親を殺してしまう子供は、まだ無邪気に笑っている。

『アミル・ダラトイズ・リルフィ・リオ・ミスティーチ』

彼女は呪術を習っていたけれど、俺には教えたらいけないと言われていたようで、俺の前では呪文を唱えたことはなかったけれど、この呪文だけは教えてくれた。
おまじないと言っているが、おそらくこれは呪文の一種だ。

『われしかくをもってしそをもとむ。ひかりにめされしあまのつかい、あらわれよ。
……という意味なんですって』

意味が理解できていないようで、舌足らずに教えてくれる意味。

声が、次第に遠のいていく。

『ハルカさま』

彼女が俺をこう呼ぶことは、二度とない。

「__アンジェ……」

夢から覚めると、思わず彼女の名を声にしていた。

「我、資格を以って始祖を求む。光に召されし天の遣い、現れよ」

あのときは肌身離さずつけていたアレキサンドライトのペンダントを、彼女はまだ持っているだろうか。