その仮面、剥がさせていただきます!

「最悪なんかじゃないよ」

伏せた顔の前で、リクの優しい声が聞こえた。

その優しさに余計に涙が溢れだす。

嗚咽を抑えながら泣いていると、リクの手があたしの頭に触れ優しく撫でる。

人前で泣かない。そう決めていたのに、それさえも上手くいかない……


あたしが落ち着くまで傍で黙って待っていてくれたリクは本当に優しい人だなって改めて思う。

この手があたしだけのものになったらいいのに……



このまま自分の部屋に引き返したかったけど、春樹がいるところに帰るわけにもいかず、泣きはらした顔でリクに付いてリビングに入った。

「顔洗ってくる?」

「ううん。いいよ」

ソファーに隣同士座ると、少しの沈黙が気まずい。

「拓にぃが……なんかゴメンね」

何か言わなきゃってあたしはリクに話しかけた。

「ううん……」

「あの……さ。リクは知ってったんだね」

潜入捜査のこと……

それも、ゴメンね。とあたしは今までのゴメンを全部言おうと隣のリクに頭を下げた。

「それでも、リツは俺のこと好きだって言ってくれたよね」

「う……ん」

「ならいいよ」

優しく微笑んだリクを見てホッと胸を撫で下ろした。

でも……

リクがいいよって言ってくれても、あたしはけじめをつけなければいけない。

このままリクの優しさに甘えて傍に居ても自分が辛いだけだから。

「リク。もうあたしとムリして付き合うことはないんだよ」

「それって別れるってこと?」

「うん……」

きっとリクはこう言う。

―――リツが別れたいならそれでいいよ。

って……

「リツはそれでいいの?」

いいわけない。でも、そうしなければあたしはダメになってしまいそうな気がする。

このままリクと付き合って、好きで好きでどうしようもなくなればあたし自身どうなるのか怖かった。

振り向いてくれないリクのことを恨んでしまうかもしれない。

「あたし……カノジョじゃなくて、リクと友達になってもいいかな」

あたしが選んだ選択。

リクと一緒に居たい。でも、彼女としては辛いだけ。友達なら一緒に居ても平気になれるような気がする。


あたしは『友達』という安全圏を得て、リクとの間に『友達』という境界線を張りたかった。