春樹とリクの関係ってどんなんだろ。

あたしから見たら、春樹が一方的にリクのことが心配でしょうがないって感じだけど。

春樹と別れたあたしは、リクの隣の部屋に帰ると買ってきたお弁当を拓にぃに一つ渡した。

マンションから出入りするのだって誰も見ていないか気を使う。

辺りを窺いながら入るあたしって挙動不審の侵入者だって思われても仕方ない。

あまりここから出ない生活をしなきゃ。

学校が始まるとそうはいかなくなるけど、買い物はまとめ買いして、外に出る用事はなるべく減らそう。


春樹に潜入のことがバレて少しホッとしてる自分がいる。

これで隣に住んでいることが分かっても、イタさ半減じゃない?

今度春樹に会ったら思い切って打ち明けてみようか……

潜入のことをどこで知ったのかは知らないけど、あたしがここに住んでることを知られるのも時間の問題のような気もする。

割り箸でお弁当のハンバーグを突き、テレビを見ながらお弁当を食べてる拓にぃをチラリと見た。

あたしより8歳年上の拓にぃは恋愛経験が豊富そう。

学生のときなんかは見るたびに彼女が違うってお母ちゃんも言ってたっけ。

「あのさ。友達の話しなんだけどね」

恋愛偏差値の低いあたしよりは真面な気がして思い切って拓にぃに相談してみることにした。

王子と呼ばれ、何でも完璧にこなしてしまうリクのこと。王子と付き合った彼女たちがみんな抜け殻のようになってしまうこと。それを許せない女子たちが王子と実際に付き合ってみてその原因を突き止めようとしていること。そして、王子に潜入している友達があたしに悩みを相談してきたという設定。

「ふうん。で?その友達は何が悩みだって?」

「友達が言うには、初めは全然王子のことなんかこれっぽっちもなんとも思ってなかったんだけどね。王子と付き合ってるふりをしてる中で、色んなところが見えてきたっていうか……」

「完璧だって思ってたのがそうじゃなかった?ってか」

「そうそう。それで……」

「その友達っていうのが、その王子に恋しちゃったわけね」

「そ……そうなのかな」

やっぱりあたし、リクのことが好きなのかな……

「へ~」

ニヤニヤと笑っている拓にぃと目が合う。

「な、何よ」

「お前が恋ね~」

「拓にぃ聞いてたよね。あたしじゃなくて、友達の話し!」

「友達ねぇ」