あたしのことをあれこれと気にかけてくれる拓にぃに、少しは優しくなったのかな?って安心したあたしがバカだった。

いやいや。縄で椅子に括りつけられた時に気付かなかったあたしがアホでした。


拓にぃもあたしと同じで料理が出来ないらしく、お弁当を買ってこいとお金を握らされ部屋を追い出されたあたしは、仕方なくコンビニに向かって歩いていた。

これからずっとこんな食生活が続くのだろうか。

お母ちゃんのご飯が恋しくなる。

近くのコンビニに入り、お弁当を選んでいると後ろから誰かに声を掛けられた。

「あの……」

「はい?」

自分と同じ高校生ぐらいのその男の子は知らない顔だった。

「このお弁当も美味しいよ」

「あ。ごめんなさい」

あたしがお弁当の並んだ棚を占領していて、お弁当を取ろうに取れなかったのかと思って慌てて後ろに下がる。

「いいよ。そういうんじゃないから」

そう言って優しそうな笑顔であたしに微笑む。

見たところ爽やか青年だけど。

そういうんじゃなかったら、どういうことなんだ?

心の中でその男に突っ込みを入れ、あたしは勧められたお弁当を二個カゴの中に入れるとレジに持って行った。


コンビニを出ると、さっきの爽やか青年が追いかけてきた。

「あの。何か?」

「あのさ。君高校生?」

「はあ……」

「彼氏いるの?」

「あの?それが何か……」

言いかけると、あたしの腕を掴んだ誰かにもの凄い勢いで横に引っ張られた。

あまりの力に腕が引きちぎれるかと思ったほど。

「あいにく、こいつには彼氏いるから」

あたしに声を掛けた男を睨みながら言う春樹がそこにいた。