運がいいのか悪いのか、今は春休み。

拓にぃに変な頭にされた日には、すぐにでも美容室に駆け込んでやる~

鏡がないから、自分の髪がどうなっているのかも分からないまま、あたしは拓にぃにされるがままになっていた。

ったく、いいオモチャだってーの。

髪を切り、いつの間に用意したのかロットを巻きパーマをかけている様子。

ああ。あたしの頭。やっぱ拓にぃの芸術という名の凶器で爆発しちゃうんだ……

諦めたあたしはついウトウトと眠ってしまった。



「完成!律子。頭洗ってこい」

縄を解かれる時にハッと気が付き、目を開くとすごい違和感を感じた。目を擦ろうとすると拓にぃに腕を掴まれる。

「何よ」

「擦るな。エクステが取れる」

「エクステ?」

「顔も弄ってみました☆」



お風呂場に駆け込み鏡の中の自分を見る。

濡れていてよく分からないけど、肩の下あたりまで伸ばしっぱなしだった髪はクルクルとゆるいパーマがかかっているみたいだった。

顔は……

違和感があった目は、まるでツケマをした時のように多くそして長いまつ毛が生えている。

おまけに、眉毛も整えられてるし……

そんなに激変したわけじゃないけど、これあたしの顔じゃないみたい。


拓にぃに言われた通り、髪を洗うとタオルでガシガシ拭きながらリビングに戻って行った。

慣れた手つきでドアライヤー片手にあたしの髪を乾かすと、今度はメイク道具を広げ化粧を始めた。


「どう?気に入っただろ?」

自信満々に言った拓にぃの手から鏡を奪い自分の顔を確認する。


「わ……」

フワフワとした髪が肩で揺れている。メイクはそんなに濃くないのに自分の目じゃないみたいに大きいし、唇だってユメカに負けないほどプルプルしている。

これが、あたし?

「改造終了。ってことでお礼に今晩ここに泊めろ☆」

ウットリと自分を眺めていたあたしの眉間に皺が入る。

「勝手にやったのは拓にぃでしょ?それに、わざわざここに泊まらなくても、帰るとこあるでしょうが!」

「それが……女に家追い出されたんだよな。明日には機嫌直ると思うから、今日だけここに泊めてくれ」

「イヤ。どうせ拓にぃが怒らせること彼女にしたんでしょ?だったら素直に謝って家に帰るべきよ」

「そんなこと言っていいのか?今日律子は誰と遊園地に行ったんだろうな~友達ってことはないよな。そこで男と一緒に歩いてたの見たし」

「だ、だったら何なのよ」

「男の顔は残念ながら見えなかったけど、その彼氏に言ってもいいのかな~」

「…………」

「お前がいつまでオネショしてたとか。寝てる時のイビキの凄さとか?おおそういやお前ってなにかに抱きつかなきゃ眠れなかったな。それに」

「分かったよ……泊めればいいんでしょ……」