リクはあれからも変わることなく平然としていた。


あたしがキスを拒んだのは頂上じゃなかったからと信じて疑ってないんだろうな。


そう考えると途端に腹が立ってくる。


観覧車の頂上でキスしてくれなかったからって怒るカノジョがどこにいる?


ったく、いるんだったら連れてきてみやがれってんだ!


怒りモードのあたしのことなど気にかけている様子すらなく、マンションに着くと、一応名残惜しそうにという雰囲気でリクは中に入って行った。


あたしは帰るふりをして時間差で同じマンションの隣の部屋に入って行く。


ちょっと面倒だけど、仕方ない。


玄関のドアを閉めると一気に力が抜けた。


ああ……疲れる。


ぐったりとして蹲っているとお腹がグウッと鳴った。


そういや、朝から何も食べていないことを思い出して、靴を脱ぐとその場に倒れこむ。


昨日の夜だって、お母ちゃんが買っていた非常食のカップラーメンだった。


あたしの毎日が非常だってえの!


落ち込む気分と空腹で、歩いて中に入る気力さえない。


「誰か~」


助けを呼んだところで、誰もいない。


それが悲しい一人暮らし。


「やっと帰って来たか」


誰もいないはずなのに、頭上から聞こえてきた声に顔を上げる。


「あれ?拓にぃ」


「なにがアレ?だ」


すっかり忘れてた拓にぃの存在……


「なんだ。拓にぃか……」


今度は横向きに寝転がったあたしを見て、拓にぃは怒りを交えたため息を付いた。


「久しぶりに会ったのに、お前全然変わってねぇ」