これまでの思い出とさよならしたあたしは、清々しい気持ちで朝を迎えた。

軍手をはめた手で額の汗を拭う。

軍手使用はあまりにも部屋が汚かったから……っていうのはご愛嬌で☆


そして、一睡もしないで迎えた終業式。


ええ。

案の定、先生の長ったらしいお話聞きながら、ヨダレ垂らしてお舟漕ぎまくってたわよ。

何度も凭れかかるあたしの頭を、迷惑そうに跳ね除けてた隣の男子が気の毒だったと、後でユメカに嘆かれたけど、そんなの知りゃ~しないわよ?



明日から春休みってことで、浮足立ってるクラスメイトとも今日でお別れ。三年生になるとクラス替えで、殆どの人とバラバラになってしまう。

この教室とも今日でお別れか。

廊下を出てからもう一度黄昏ながら教室を見渡すと、あたしは一人で歩き出した。


リクの姿は今日もない。


たまたま会わないだけなのか、それとも故意にあたしの視界に入らないようにしているのか……その真相はリクのみぞ知る……


な~んて、サスペンスごっこを楽しんでいる余裕はなく、帰り際にはユメカから「りっちゃんの楽しい春休みの始まりだね♪」と満面の笑みで呼び止められた。

ひょえ~

なんて恐ろしい顔……

この女。笑ってる時が一番腹黒いんだよ!


そして、その悪魔はあたしの耳元で囁く。


「ズタボロになるまで努力しようね☆」



このところのあたしって、死神か貧乏神……いや。疫病神が取りついているんじゃなかろうか?


ハッとして後ろを振り返って確認してみる。

腕はファインティングポーズで戦う気満々である。



「相変わらずの奇行だな」

鞄を肩に担いだ呆れ顔の春樹が廊下に立っていた。

「出たな。疫病神」

「また訳わからんことを……」

いや。考えてみれば、春樹の勘違いから、あたしの運勢が急降下している。

やっぱり、あんたは疫病神だ!


身に覚えのない因縁を付けられた春樹はため息交じりの息を吐いた。


「お前……昨日、彩花たちに呼び出し食らったんだって?」