その仮面、剥がさせていただきます!

リクがあたしを好きなわけないじゃない。

そんなこと初めから分かってんのよ!

あんな奴に指摘されなくても、自分でちゃんと分かってんだから!!


家に入ると、キッチンの電気もつけず、持っていた鞄をリビングのソファめがけて投げつける。鞄はソファじゃなく、フローリングの床に落ちた音がした。

訳も分からずイライラする自分を止められない。


冷蔵庫を開けると、ライトの明るさに目を細め、紙パックの牛乳を掴むとそのまま飲んだ。

「明かりも付けずに……あら、律子今帰ったの?」

このところ帰宅時間が遅いお母ちゃんが、珍しく早く帰ってきたみたいだった。

明るくなったリビングのソファの脇に、転がった鞄をお母ちゃんが拾ってソファの上に置いた。

「ご飯食べるでしょ?今温めてあげるから」

仕事に出かける前に用意した夕食を冷蔵庫から取り出すと、レンジの中に入れる。

いつもなら、自分で温めてテレビに大笑いしながら一人で食事を取るところだけど……

「お母ちゃん、何かあった?」

お母ちゃんは、朝はあたしより早くに出かけ、帰りはあたしが寝てから帰ってくる。

そんな生活を2か月近く続けていた。

いくら忙しくても朝起きるとテーブルには朝食が用意してある。朝食の横には学校に持っていくお弁当がいつも置かれていた。

母親ながら凄いなって感心する。

「やっぱり分かっちゃうか」

困ったような笑顔を向けると、温め終わった料理をレンジから取り出し、あたしの前に並べて椅子に座った。

あたしは母親のことを『お母ちゃん』と呼ぶけど、ハタチであたしを生んだお母ちゃんは見た目も若い。

「お父ちゃんのこと?」

「まあ。そうね……律子、あのね。私、お父さんと一緒に暮らそうと思うの」

「一緒にって……だってもうすぐ」

お父ちゃんは単身赴任で海外で仕事をしている。確かもうすぐ戻ってくるって言ってたよね?

「それがね、二年って言ってたのが期間が伸びたらしいの。いつこっちに戻ってこられるか分からないって連絡が来て。それなら、私もあっちに行ってお父さんと一緒にいた方がいいかなって」

「それは……お母ちゃんがそうしたいなら、反対しないけど。でも、あたしは、学校とかどうすればいい?」

海外に留学か……

今の生活が一変するけど、それもまたいいかもしれない。あんなことがあったから余計そう思うのかも。