「それじゃ、半分持ってもらおうかな」

その日その日の授業で配られたプリントをノートに張り付けるという澤田先生のやり方のせいで、40人分といっても一冊ずつが分厚く、そして重い。

あたしは躊躇うことなくリクにノートを預けようと重いノートを傾けた。

その瞬間、あたしの腕の中で積み重ねてあったノートたちが滑り落ち、床に散らばる。

「リツはそそっかしいな」

フッと笑ったリクは、当然のように床に落ちたノートを拾ってくれていた。


底なしに優しいんだよな……


これもリクと一緒にいて感じたこと。


「あ。ごめん。ごめん」

自分の手に残った数冊のノートを床に置くと、あたしもノートを拾う。


「わっ。リツ座っちゃだめ」

「ふぇ?」

いつも代わり映えのしないテンションのリクが珍しく慌ててるから変な声が出てしまった。

「リツ!スカートなんだから」

「ああ……そっか」

リクの前で膝を立てて座ったものだから……ん?もしかして見られた?


あたしはリクの視線を意識しながら、膝をついてノートをかき集めた。





職員室に入ると、澤田先生の机の上にノートをこれ見よがしに大きな音を立てて置いてやった。
あの『ハンカチ事件』以来、あたしは澤田先生に目を付けられたらしく、よくこういう雑用を命じられる。

ホント迷惑!

「おう。ご苦労」

あたしの顔も見ず、座っている澤田先生はケータイを弄っている。

「あたし、忙しいのでもう帰ります」

次の用事を言わせないようにと早口で言うとすぐにその場を立ち去ろうとしたあたしに向かって澤田先生が一言……

「ノートの数。少ないんじゃない?」

あ。そだった。

結局ほとんどのノートをリクが持ってくれて、今机の上に置いたのは十冊ほど。

「後のノートは……」