「なあ陸人。お前はリツに何を言いたくてここに来たんだ?」

そう。

今までの話しを聞いているとリクがあたしに会いに来た理由が分からない。

リクが今何を考えているのか全然分からない。


「俺は……もしもリツが俺のことを理解してくれて、これまでみたいに一緒にいてくれたとしても、それは違うって思うから……」


「何がどう違うんだ?」


「本音は今までみたいにリツと一緒にいたい。けど、ダメなんです」


「これ以上好きになれない……か?」


「…………」


「おまえみたいなの何て言うのか知ってるか?『卑怯者』って言うんだぜ。『臆病者』とも言うな」


「一緒にいたらリツのことを苦しめてしまう。もっともっと傷つけてしまう」


リクの悲痛な声がドアの向こう側から聞こえてきても、何も出来ずに二人の話を聞いているだけのあたしの方が卑怯者で臆病者なのに……

卑怯者のあたしは、あたしには見せることのないリクの気持ちがもっと知りたいって思ってしまう。