いやいや。


昨日の今日でそりゃあり得ないでしょ。


「なあ。今日弁当もないのか?」


そう言って春樹が一つパンをあたしの机の上に置いた。


そういえば、寝坊したから朝ごはんも食べていなかった。



それにトイレに閉じ込められた時以来、教室の外に出るのを避けている。


どうしてもトイレに行きたいときにはユメカの後を付いていく有様だ。


生徒たちが溢れ返っている購買に何かを買いに行こうなんて微塵も思わなかった。


「ありがと」


春樹から素直にパンを貰うとかぶりつくように食べ始めた。


「そんな慌てて食べなくても。なんか飲み物……」


パンを口に詰め込み過ぎて咳き込むと春樹の机にあったペットボトルを掴んで口に流し込んだ。


「死ぬかと思った……」


「おまえな」


だって自分でもびっくりするぐらいお腹が空いてたんだもん。


リクの事を気にして食欲はないって思ってたのに、人間の生きる欲とは恐ろしい。