リクと二人でご飯を食べてる時は他愛もない話しをしていた。

新しいクラスはどうだとか、教科の先生の癖についてだとか、リクと話してると楽しいけれど本当に話したいことはそんなことじゃない。

どう話しを切り出せばいいのかタイミングも分からずすぐに寝る時間になってしまった。


こんなことでは一歩も前に進めない。


考え事をしながら観ていたテレビを消し、リクの部屋へ入るとリクがベッドの上で胡坐をかいて本を読んでいた。

一度顔を上げてこっちを見たけれどまたすぐに本に目を落とす。


邪魔にならないようになるべく音を立てずに布団へ潜りこんだ。


いつものようにリクに背を向けて抱き枕に抱きつく。


リクとあたしとの間にはもう一つの抱き枕があって暗黙の了解でお互いその境界線を越えることはない。


ページをめくる音が何度か聞こえてリクが動く気配がしたと思ったら電気が消えた。


「リツ。おやすみ」


リクは小声で言ったけれど静かな部屋の中でははっきりと聞こえた。


「おやすみ」


まだ眠れなかったあたしもリクにおやすみを返す。


「起きてたんだ」

「うん。読んでた本面白いの?」

「結構面白いよ。リツも読む?」

「あたしはいいや」


本を見てたらすぐに寝てしまうからなかなか進まない。

面白い本だったらその先が知りたくて寝るのも忘れて読んでしまうのかな。


そんな経験がないから分からない。




明かりの消えた真っ暗な部屋の天井をジッと見ていたら、リクが動いてベッドが揺れた。


「聞かずにおこうかと思ってたけど、一度だけ確認させて」

「……うん」


なんだろう。ちょっと怖い。


「俺の言ったことちゃんと考えてくれてるよね?」