「随分進んだね」

「でもまだこんなにある」

澤田先生に押し付けられた雑用を同じクラスの椎名浩太と作業中。

あたしは足元に積み重なっている段ボールの数にげんなりしていた。


そこに荒々しくドアを開けて入ってきたウザい奴が一人。


「陸人からさっき聞いたぞ!ったくあいつが何を考えてるのかさっぱり分からん」

「あたしにだって分からないよ」

春樹と話している最中もプリントをファイルに綴じていると春樹があたしの腕を掴んで立ち上がらされた。

「何よ?」

「ちょっと来い」

春樹が浩太にチラリと視線を向けたから、ああと納得して春樹について準備室から出て行った。


少し肌寒い廊下を並んで歩く。


「で?お前は陸人になんて返事をするつもりだ?」

「あんたには関係ないでしょ?」

「お前も十分分かってると思うけど、陸人はな」

「『誰も好きにならない』でしょ?」

「ああ。だからな」

「あたしがリクにどう返事しようと、あんたには関係ないし」

「あのな……」

苛々したのか春樹は頭をガシガシかいた。

「あたしにだって分からないよ。なんでリクがあんなこと言ったのかとか?あたしへの気持ちとか?」


リクへの返事次第で今までの関係が崩れてしまうことだってありうるわけだし。


「お前の事だから舞い上がってすぐにOKすると思ってたけど……」


そんなに単純な話じゃない。


準備室から離れた階段の前で立ち止まり一段上にあがるとそこに座った。


「あたし一度リクの事拒否してるの知ってるでしょ」

「それってあの時のことか?」

「リクのことは好きだけど、付き合う自信ない」

「なんだそれ」

「初めは潜入目的でリクと付き合ってたけど、あの時分かったんだよね。リクは『彼氏』として『彼女』に接してるって」

「それって普通のことじゃないのか?」