「俺はリツと一緒にいたいって思ってるのにリツの気持ちは違うんだ……」

ううん。そうじゃないよ。

「さっき言おうとしたことは……今言ったら卑怯じゃないのかって思ったから言わなかっただけだよ」

その言いたかったことって何?

リクの身体にリクの声が響いて聞こえる。

言いたかったことも知りたいけど、一番知りたいのはリクの気持ち。

こんなことされたら誰だって勘違いをしてしまう。


もう絶対にリクには期待しないって決めたのに。


抱きしめられたリクの腕は暖かくて、いつも抱きついて寝ている抱き枕とは全然違う。


あたしとリクの心の距離もこんなに近かったらいいのに……



「卑怯でもなんでもいいよ。あたしが許す」



あたしへの行動がすべてリクによる計算だとしてもあたしはやっぱりリクの事が好きだから。




あたしの背中に回っていた手で肩を掴むとリクはあたしとの距離を離した。


リクの顔を見上げる。


すうっと深呼吸をしたリクが言った。




「フリじゃなくて、正式な彼女になってほしい」




今……なんて言った?


本日。二度目の硬直。


あたしが驚いた顔をしたからリクは慌てて両手を振った。



「返事はすぐじゃなくていいから。ゆっくりと時間をかけて考えてほしい」


「う、うん」



やっと動いた口元であたしはそう答えたけど



リクは本気なんだろうか?