至近距離でリクと目が合う。

おかしくなりそうなほどのドキドキ度合だからホントは目を背けたいけど、リクが真剣に見つめてくるから逸らせずにいた。

沈黙が続く。

まるで何かよからぬことを言い渡される直前のような雰囲気で次第に緊張のドキドキに変わってきた。

緊張に耐え切れなくてたまらず口を開いた。


「リク?」


「あ……のさ」

「うん」


リクは何か言いたそうにあたしを見つめてるけど目線を下に落とした。


「やっぱいいや」

「なに?言いかけてやめるとか。すっごく気になるんだけど」


頭の中ではリクが今何を言おうとしたのかを予測し始めた。


あたしが彼女役なことに不満があるとか?

それは今更って気もするし……

それじゃお母さんのことをあたしに話したことを後悔してるとか?


おおっ!それだ。


「大丈夫だよ。さっきリクから聞いたことは誰にも言わないから」


安心してねとニッコリと笑ったけど、リクの表情は冴えない。


あたしの予想は違ったのね。


「あ。分かった。今日ご飯残しちゃったこと?せっかくリクが作ってくれたのにゴメン」


これもダメか。


「もしかして……今日ぐらいは一人で寝たいとか?も~早く言ってよ。あたしに遠慮なんてしないでよね」


これには反応したらしくリクの頬がピクリと動いた。


「そうだよね一人になりたい時もあるよね。あたしってばそんなことも……」

気づかなくて。と最後まで続けられなかった。


それはリクがあたしのことを抱きしめたから。


後ろからでもなく、からかうようなハグでもなく、力強さはあるけれど優しく包み込まれているような温かい抱擁。




これもリクの計算ですか?