高校での最後の一年が始まった。

昨日の今日でまだ体調は万全ではないけれど、クラス発表やらなにやらで初日から休むことは出来ない。

病院から帰ってから、リクはいつもと変わらない態度であたしに手料理をふるまってくれた。

何日も放ったらかしにしていたケータイを手にしたときには、今日この場所に来ることはないって思ってたけど……


「あら!りっちゃん!!」

わざとらしくユメカが後部からあたしの肩を叩いた。

振り返るとあたしを見たユメカの瞳が一回り大きくなって顔を凝視された。

「昨日電話でも言ったけどね……」

「あ~そのこと?そんなことはもうどうでもいいのよ」

着信覧を埋め尽くすほど電話しといて「どうでもいい」はないでしょ。と、一度も電話に出なかった自分のことは棚の上に放り投げ、ユメカに分からないほどの小さなため息を付いた。

春休みが終わるまでに海道陸人の弱点を見つけろっていうユメカからの一方的な命令だったけれど、あたしはその弱点をまだ見つけられずにいた。

そのことについてユメカから責められないことを不気味に感じていると、ユメカが不意に呟いた。

「でも良かったわ。りっちゃんが奈緒ちゃんみたいになったらどうしようかって心配しちゃった」

ん?なんで?

「そんな顔しないの!分かってるって。所詮りっちゃんと海道陸人じゃ釣り合うわけがなかったんだから。まあ、少しは努力したみたいだけど」

慰めるようにユメカはあたしの肩をトントンと優しく叩く。

意味が分からないんですけど?

「もしかしたら、もう新しい彼女が出来てるかもね」

「誰に?」

あたしの首が傾いた。

「何言ってるの?海道陸人に決まってるじゃない」