お兄さんが言うように、きっと真っ赤になってるであろう頬を隠そうと手のひらで覆う。

リクのお兄さんだけど、好きな人のお兄さんだって分かってるけど……あの顔で微笑んであんなことをされた日にゃ誰でも頬を染めるっての!

あたしはまだ火照りが冷めないのに、さっきまで悪戯っ子のように見えたお兄さんが神妙な顔つきに変わった。


「律子ちゃんは陸人のこと心配してここに来てくれたんだよね?」

「……はい」

確かにそうだった。

リクの事が心配で病院へ来たけれど、逆に心配させている。

「オレが言うことじゃないから、聞く気があったら陸人に聞いてやって」

「あの……」

「母さんと陸人のことだけど……律子ちゃんなら陸人も話すんじゃないかって思ってね。今まで誰にも言えずに一人で苦しんでると思うんだ。ハプニングがあってここへ来たとしても、あいつが母さんに会いに行ったのは大きな進歩だから……」


お兄さんはあたしにリクの力になってくれと言っているのだろう。


けど、お母さんのことを聞けばあの時みたいにまたいつもとは違うリクになってしまいそうで怖い……


あたしにはお兄さんの期待する言葉を返すことは出来なかった。