リクが戻ってくる間、病室にはあたしとリクのお兄さんと二人きり……

やっぱりなんだか気まずくて訳もなくキョロキョロと辺りを見回していた。

そのうちお兄さんと目が合ってしまって益々気まずくなる。


本当はリクとお母さんに何があったのか聞きたいけれど、リクの彼女でもない自分はそんな立場にもいない……


リクはお母さんとどんな話しをしてるんだろ?

すぐに視線を外すと、腕に刺さった点滴の針を気にするふりをして、あたしはそんなことばかり考えていた。

「陸人のこと気になるよね」

まるであたしの心を読み取るかのようなお兄さんの言葉に思わず顔を上げた。

「あ。いえ……点滴ってまだ終わらないかなって」

「後30分ぐらいはかかりそうだけど?」

30分……

今のあたしにとっちゃ~長い時間だな。

「あの……」

上半身を起こしたあたしの足元辺りで丸椅子に座っていたお兄さんが椅子を引きずって少しだけ傍に近づいた。

「ご迷惑おかけしてすみませんでした」

座ったまま深々と頭を下げるとお兄さんは肩の力を抜くように軽く息を吐いた。

「なんだ。そんなこと……別に気にするような事じゃないから」

いやいや。迷惑この上ない奴だと罵ってもらっても、全然!全く!構いませんよ。

いえいえ。本当に申し訳ないデス。と首を横に振っていると、頭にお兄さんの手が触れる。

驚いて顔を上げると、目を細めて優しく笑うお兄さんがあたしの頭を撫でていた。

ええっと……

お兄さんの行動に戸惑っていると、クスリと笑うお兄さん。

「律子ちゃん。顔真っ赤」

「だ!ふぇ!はっ!」

訳の分からない音が自分の口から飛び出すと益々顔が熱くなって、頬を両手で押さえた。

「ウブなんだね」

「か、からかわないで下さい」

リクの人をおちょくる才能はお兄さん譲りだったかっ。