なんだったんだろ?

おでこに振れたものの正体を考えていると、ドアが開く音と足音がこっちへやってきた。

「まだ目覚まさない?」

どうやらリクのお兄さんが来たようだ。

余計緊張が増し、身体全体に冷や汗が滲み出てくる。

「陸人ってホント分かり易いっていうか……」

「な、なにが?」

クスリとお兄さんが笑いながら言うと、リクはそれを否定するように強い口調になっている。

「この子が倒れたって言ったら慌てて飛んでくるのに」

「別に……」

お兄さんに対する態度は相変わらずだけど……

あたしのこと心配して駆けつけてくれたんだ。


心配しなくてもいいって啖呵切ったけどさ。やっぱり少しでもあたしのことを考えてくれてるって思うだけでも嬉しいよ。


もうこれ以上心配させたらいけないよね。


「陸人。ここまで来たんだ。母さんにも会いに行けよ」

お兄さんの言葉で、開きかけた瞼をまた閉じる。

リク。何て答えるんだろ?

ドキドキしながら暫く沈黙が続くと、リクは「分かったよ」と呟いてドアの引く音が聞こえた。


お母さんに会いに行ったんだ……

ホッとして肩の力が抜けるとリクのお兄さんがあたしを覗き込んで一言。


「もう目を開けても大丈夫だよ」


「…………」



あ。バレてたのね……