「確信犯だな」

あのままでいたかったけれど、そういうわけにもいかずすぐに起き上がり、リクを「大丈夫だよ」と安心させると春樹に耳元でそう言われた。

ふん。

確信犯だろうがなんだろうが、あんな近くでリクの顔を眺める機会なんかそうそうないんだもん。

そんぐらいいいじゃない!

春樹を睨みつけ「あんたがいなかったらもっと眺めていられたのに」と心に中で呟いた。


しかしまあ。ベッドも無事に届いたことだし、名残惜しいけどあたしは隣に帰るとするかな。


帰ることをリクに告げ廊下に出ると、来たときにはなかった大きい段ボールが一つ置いてある。

「リク。あれ、業者の人が忘れていったみたいなんだけど」

運ぼうと持ってみたのはいいけど、重くて持ち上がらない段ボール。

仕方がないから、ドアを開けて廊下にある段ボールを指さしながらリクに伝えた。


「ああ。あれは忘れものじゃないよ。リツ開けてみて」

そう言われて、戸惑いながらも張り付いているガムテープを剥がして段ボールのふたを開けると、そこには梱包されたいくつかの食器らしき物と、端の方にビニールで圧縮されたクッションのようなものが入っていた。

「これ……なんだろう」

一番に圧縮されたナイロン袋を取り出すと、傍に来たリクに「開けてもいい?」と訪ねてから中身を取り出す。

空気が入ると少し膨らんだそれは見覚えがある。

「もしかして……抱き枕?」

「そう。リツの抱き枕☆」

「あ、あたしの!?」

ベッドを選んでいた時にリクがどこからか持ってきた抱き枕だったけれど、リクはいつの間にこれを買ったんだろうと不思議に思っていた。

もしやと思って食器を一つ取り出すと、手にしたマグカップにも覚えがある……

「これはお揃い」

リクはそう言って同じような形の食器の梱包を外すと、色違いでまったく同じマグカップが現れた。

「これって、リクと一緒に見て可愛いねって言ってたマグカップだよね?でもどうして?」

帰るまで一緒だったし、帰ってからもあたしの部屋に夜まで一緒にいたのに、いったいいつ買ったのだろう?

「秘密♪」

あたしに向かって上手にウインクしたリクを指さして「ああああっ」と大声を張り上げた。


あ、あの時だったんだ。


そう分かった時、あたしは心の中でリクに謝った。



ううっ。

トイレが長いなんて思ってゴメン……