「あたしが、いっちばん~!」

「俺の方が早かったよ」

「ううん。絶対あたしだって!」


競争心に火が付いたあたしは、ベッドから起き上がるとリクを床に落とそうとリクの身体を押す。

でもそこはやっぱり男の子で重い身体はびくともしない。


「無駄な抵抗はやめろ~」

寝転んだままのリクが今度はあたしの手を掴んでベッドから引きずり降ろそうとした。

「そうはさせないよ。リクはコショコショの刑ぃだぁ~」

リクの脇腹をくすぐるとリクは身体を捩らせながら笑いを我慢しているみたいだった。

「プっ。リツ……酷い」

「まだまだぁ」

更にくすぐる手の速さを加速すると、我慢できなくなったリクが起き上がり反対にあたしをくすぐりにかかってきた。

ベッドの上で、お互いが吹き出しながらくすぐり合っていると、部屋を覗いた春樹が冷めた顔で一言。


「何やってんだよ」


その声に振り向いたあたしは、あまりのくすぐったさにリクのコショコショの刑から逃れようとして、勢い余ってベッドから転がり落ちそうになってしまった。

「リツ!危ない」

頭から床に転がっていく瞬間にリクがあたしの腕を掴んだまではいいのだけれど、反動でリクも一緒にベッドから落ちていく。

「いったぁ……」

「リツ。大丈夫?」

ゴンと鈍い音がして頭と首を床に打ち付ける。

「いらんことしてるからだ」

冷たい春樹の声にムッとしながらギュッと閉じていた目を開くと、目の前にリクの綺麗な顔があった。

「今、頭打ったよね」

心配そうにあたしを見ているリクの整った顔を放心状態で見ているあたし。

床に仰向けに倒れたあたしの上に覆いかぶさるようにリクがいる。


う……わあ。

これってなんだか凄い状況?


「リツ?」

何も言い返さないあたしを本気で心配してくれてるリクには申し訳ないんだけど、もう少しこのままでいたいような気がして、ジッとリクの顔を眺めていた。