「分かってると思うけど、お前から告ったところで同じだ。陸人はお前みたいな女でも断わらないからな」


―――女の子を傷つけちゃいけないんだよ


そう……だよね。

リクの気持ちが知りたければ、あたしから行動を起こしちゃいけない。

方法は一つ……


フンと生意気そうな顔をした春樹を見上げあたしは決心した。

「あたし……」

そう言いかけると春樹が背にしていたリクんちの玄関ドアが開く。


現れたリクの濡れた髪にドキリと鼓動が大きくなる。

あたしと春樹を交互に見たリクの表情がが徐々に不機嫌になっていった。


「俺んちの前で何してる?」

その声は低くて威圧感がある。

「陸人~今晩泊めて」

リクの顔色などまるで気にしない春樹はリクをすり抜けて玄関の中に入って行ってしまった。

肌寒さが残るマンションの廊下にリクと二人きり。

なんだか気まずい。

「リツ。どうしたの?」

いつもの可愛い顔に戻ったリクが不思議そうに顔を傾けた。

「あ……いや。別に」

自分の気持ちを伝えに来たとは口が裂けても言えない。

「拓実さんは帰ったの?」

「あの……さ」

拓にぃが暫くうちに泊まるともなんだか言いづらい。

「リツも泊まってく?」

ニコリと王子スマイルのリクに一気に顔が熱くなった。

「ううん。今日は大丈夫!また明日ね。オヤスミ!」

自分ちの玄関に大急ぎで入ると扉が閉まったのを確認してからその場に蹲った。


はあ……

なんでだろ。

リクを前にすると、緊張して上手く喋れないよ。


火照った顔をパタパタと手うちわで仰いで冷ましながら思う。





リクのあの笑顔で言ってほしい。




『リツのことが好き』



って……