やっぱり今言わなくちゃいけない……

今じゃなきゃ―――


そう決心し、チャイムを鳴らすために指先に力を入れた。


「こんな時間になにやってんだ?」


急に後ろから声を掛けられ、肩がビクッと上がる。

「べ、別にあんたにカンケ―ないでしょ」

上げていた手をインターフォンから離すと後ろに立っている春樹を恨めしそうに見た。

「陸人に夜這いか?まったく油断も隙もありゃしない」

「なっ!あたしはリクを襲ったりしないもん!っていうか、春樹こそこんな時間にリクに何の用なのよ!?」

あんたこそ、リクを襲いに来たんじゃないでしょうね!

疑いの目を向けると、春樹はあたしに向かってため息を付いた。

「お前……勘違いしてんじゃね?いくら陸人がお前に優しくしたからって、それは好きっていう感情じゃねえ。そんぐらいこのちっこい脳みそでも分かんだろ?」

春樹の指があたしのおでこをデコピンすると、あたしは自分のおでこを押さえた。

「勘違い……?」

「そうだ。こうして隣に住んでるお前を無下にはできないだろ?」

そう言われればそうかとも思える。

でも……

じゃあ。あのキスは?

ベッドでのあの雰囲気は?

後ろから抱きしめられたのは?

どう考えてもあたしのことが好きなんじゃないのかって思ってしまう。


「リクは言ってたもん。『冗談じゃないから』って……」

「あいつ、好きなんだよ。そうやってお前みたいな鈍くさそうなヤツをからかうの」

「リクはそんなことしない」

「おいおい。お前は陸人のこと知らないだろ?ったくこれだから本気にさせるなって陸人に忠告したのに……大体さ、分かるだろ。陸人がお前みたいなちんちくりんと釣り合わないのが」

「う……」

それを言われると何も言い返せなくなる。

「分かったらとっとと自分の寝床に帰れ」

シッシと手のひらで追い払うような春樹の仕草に仕方なくその場から立ち去ろうとすると、また後ろから憎らしい春樹の声がした。