「今のまま友達っていう付き合いじゃいけないのかな?」

「ソレ。生殺しだから」

拓にぃに一喝されるとあたしはため息を付く。

「なんかもう面倒くさくなってきた……」

「お前な……」

だって。いくらお得意の妄想をしようとしても、やっぱりリクと正式に付き合っている自分は想像すらできない。

「友達なら別れなくっていいし」

彼女だといつか別れる時がくるかもしれないじゃない……

呆れ顔だった拓にぃの顔が一瞬で怖くなると、あたしは腕を掴まれその場に立たされた。

「気持ちもぶつけれない奴がつべこべ言ってんじゃねえよ!お前はとっとと陸人んとこに行きゃあいいの!」

拓にぃに背中を押されてよろめくあたし。

「そんなこと言ったって……」

と、まだ渋ってるあたしに拓にぃに蹴りを入れる格好をされると、仕方なさげに玄関に向かった。


どうすりゃいいんだ?

真夜中にリクんちの玄関先で途方に暮れる少女が一人。

インターフォンに手を掛け、鳴らせずにまた手を下す。

はぁ……

やっぱダメ。

リクと向き合って上手に話す自信なんてない。

自滅するぐらいなら、帰って拓にぃにお説教される方がまだマシだ。


リクに気持ちを伝えることを断念したあたしは、踵を返し自分ちの玄関を開けようと手を伸ばす。

―――タイミングを間違えれば、一生二人の気持ちが交わることがないこともあるんだ―――

拓にぃに言われた言葉が頭を掠めると名残惜しそうにもう一度リクんちの玄関ドアに目をやった。

本当にこのままでいいんだろうか?

自分の気持ちを言わないままで、リクの気持ちがあたしから離れていくのを黙って見ているだけでいいんだろうか?

自分に少しでも自信が持てたら、こんなに悩むことはなかったのかな?


いつの間にかまたリクんちの玄関先に立ってインターフォンに手をかけていた。