リクが帰ってくる前にと、両手に荷物を抱えてあたしは急いで隣に向かった。
いくら勝手に入って来てもいいよと言われたからといって、リクがいない所へ入るのは緊張する。
寝起きドッキリの如く音をたてないようにカギをさすとゆっくりと玄関のドアを開けた。
靴を脱ぎ、抜き足差し足で廊下を歩く。
歩いている途中に玄関に違和感を覚えたけれど、あたしは荷物を冷蔵庫の中に入れるという任務で頭がいっぱいですぐに前方に気が行ってしまった。
リビングとキッチンに誰もいないことを一応確認してから、冷蔵庫の前に荷物を下ろす。
ふう。
第一関門クリア。
汗もかいていないのに額の汗を拭う仕草をすると、冷蔵庫を開け分類しながら次々と食材を入れていく。
リク。驚くかな?
二袋分入れ終えたところでリクにもおすそ分けと持ってきた昨日買ったお菓子の袋を手に持った。
食後のおやつはどこに置いておこうかな。
キッチンを見渡していると、物音が聞こえた。
リクの部屋から?
袋をぶら下げたままリクの部屋の前に近づく。
「…………ぁ……」
微かな人の声みたいな音がする。
テレビでも消し忘れてるのかな?
そう思ってドアの前までくると重要なことを思い出した。
そういえば、リクの部屋にはテレビがない……
だとすれば何の音?
もしかしてドロボーとか?それともリクが帰って来てるのかな?
リクが帰ってるのだとしたら、一刻も早くここを出なきゃ。
あたしはまた音をたてないようにゆっくりと後ずさりをする。
「……ぁぁ……」
また声が聞こえるとあたしは持っているコンビニ袋を床に落としてしまった。
ガサッと床で音がして、足元に落ちた袋から箱のお菓子が飛び出す。
でも、あたしはそれを拾うことが出来ないでいる。
「ねえ。誰かいるんじゃない?」
リクの部屋からはっきり聞こえたのは女の人の声だった。
……リ……ク?
「見てくるから待ってて。ちょっと……だめだってば」
その後、ドアの向こう側で女の人の喘ぎ声とベッドの軋む音が聞こえると、あたしは何も考えることができないまま玄関を飛び出した。
どうして気づかなかったんだろう……
玄関の隅っこに揃えて置いてあったパンプスに……
自分の部屋に帰っても、壁の向こうではリクと女の人が一緒にいる。
想像するだけで胸の奥が抉られるように痛い。
あたしはケータイと財布だけ掴むと、マンションから飛び出した。
どこか遠くに行こう。
今はとにかく何も考えない。
考えると立っていられなくなりそうで、あたしは頭をからっぽにして歩きつ続けた。
いくら勝手に入って来てもいいよと言われたからといって、リクがいない所へ入るのは緊張する。
寝起きドッキリの如く音をたてないようにカギをさすとゆっくりと玄関のドアを開けた。
靴を脱ぎ、抜き足差し足で廊下を歩く。
歩いている途中に玄関に違和感を覚えたけれど、あたしは荷物を冷蔵庫の中に入れるという任務で頭がいっぱいですぐに前方に気が行ってしまった。
リビングとキッチンに誰もいないことを一応確認してから、冷蔵庫の前に荷物を下ろす。
ふう。
第一関門クリア。
汗もかいていないのに額の汗を拭う仕草をすると、冷蔵庫を開け分類しながら次々と食材を入れていく。
リク。驚くかな?
二袋分入れ終えたところでリクにもおすそ分けと持ってきた昨日買ったお菓子の袋を手に持った。
食後のおやつはどこに置いておこうかな。
キッチンを見渡していると、物音が聞こえた。
リクの部屋から?
袋をぶら下げたままリクの部屋の前に近づく。
「…………ぁ……」
微かな人の声みたいな音がする。
テレビでも消し忘れてるのかな?
そう思ってドアの前までくると重要なことを思い出した。
そういえば、リクの部屋にはテレビがない……
だとすれば何の音?
もしかしてドロボーとか?それともリクが帰って来てるのかな?
リクが帰ってるのだとしたら、一刻も早くここを出なきゃ。
あたしはまた音をたてないようにゆっくりと後ずさりをする。
「……ぁぁ……」
また声が聞こえるとあたしは持っているコンビニ袋を床に落としてしまった。
ガサッと床で音がして、足元に落ちた袋から箱のお菓子が飛び出す。
でも、あたしはそれを拾うことが出来ないでいる。
「ねえ。誰かいるんじゃない?」
リクの部屋からはっきり聞こえたのは女の人の声だった。
……リ……ク?
「見てくるから待ってて。ちょっと……だめだってば」
その後、ドアの向こう側で女の人の喘ぎ声とベッドの軋む音が聞こえると、あたしは何も考えることができないまま玄関を飛び出した。
どうして気づかなかったんだろう……
玄関の隅っこに揃えて置いてあったパンプスに……
自分の部屋に帰っても、壁の向こうではリクと女の人が一緒にいる。
想像するだけで胸の奥が抉られるように痛い。
あたしはケータイと財布だけ掴むと、マンションから飛び出した。
どこか遠くに行こう。
今はとにかく何も考えない。
考えると立っていられなくなりそうで、あたしは頭をからっぽにして歩きつ続けた。