「いっぱい買ったね。何人分って感じなんだけど?」

いいから。と結局リクがお金を支払い、あたしは何しに行ったんだろうと思いながら、隣のリクが下げた買い物袋を見ていた。

「あれもこれもリツに食べてもらおって思ったら買い過ぎちゃった」

「あたしってそんなに大食いじゃないよ」

「そう?」

あちゃ~

これはどんどん理想の女像からかけ離れていってる。

今のうちになんとかしないといけないけれども……

うう~ん。

どうやっても挽回出来ないような気がするのは気のせい?


あたしがあれやこれやと無駄と思える作戦を練っていると、隣を歩くリクの足が止まった。

「兄貴……」

リクの視線を辿ると、カフェで会った『ザ・芸能人』がオーラを纏って立っている。

「陸人……ちょっといいか」

そう言うと隣のあたしをチラリと見た。

「あたし、先帰ってるね。荷物はうちに置いておくから」

気を利かせてリクから荷物を奪うように取ると二人を残して足早にマンションに帰って行った。

リクのお兄さん、リクに何の話しだろう……

ちょっと気になったけど、あの場にあたしはいない方がいい。

お昼になったらこっちの部屋であたしが作ったカレーを食べるんだから、その時に話してくれるかもしれない。

買ってきたものを入れると冷蔵庫がいっぱいになった。

これをもう一度出してリクんちの冷蔵庫に入れ直すのは面倒だな。

そうだ。

ここで一緒に作ればいいんだ。

リクが来たときにそう提案をしてみようと思いながら冷蔵庫の扉を閉める。

リク、早く帰ってこないかな……


ご飯を炊き、カレーを煮込んでいるとリクからケータイにメールがあった。

<ゴメン。お昼は行けそうにないから、カレーは夕食でもいい?買ってきた物はその時持って帰るから>

なんだ。リク来ないのか……

がっかりしてコンロの火を止めるとリビングでテレビを見ながら寝転ぶ。

ゴロゴロし過ぎてお昼を過ぎてもお腹が空かない。

暇だ……

リモコンのボタンを押して色んな番組を観るけれど、たいして面白いわけでもなく寝転んでいるソファから起き上がった。

そうだ。

リクがここに来る前にリクの部屋に食材を運んでおこう。

またまたアイデアが浮かぶと、あたしはすぐに行動に移した。

気の付く女はスーパー女子必須項目でしょ~

預かっているカギをポケットに入れ、入れた食材をまた冷蔵庫から買い物袋に移す。

この作業って結構大変。

代わりにやってあげれば少しはリクの助けになるかも。