いつもは完璧な王子の髪が跳ねている時点で相当乙女心を擽られる。

これも作戦か?

朝食を食べながらリクの顔をチラチラ見ていたら、リクが「美味しくなかった?」ってシュンとするから「ううん」と否定してから思い切って聞いてみた。


「リクって元カノたちとどうして別れちゃったの?」


あたしの質問に咳き込むリクはお茶を一気に飲み干した。

「な、何?突然……」

手の甲で口を拭う仕草もまたキュンとくる。

だめだ……

あたし、かなりヤバいかも。


「知りたいから質問したの。あたしとリクってもう付き合っていないから、聞いてもいいかなって思ったんだけど」

いくらなんでも、付き合っている時に出来ない質問よね。

そういう心得はあるつもりなんだけど。

これって友達でも聞いちゃいけないことだった?

「それって。友達に頼まれた潜入捜査に必要な事だから?」

「潜入……あ。忘れてた」

しまった。

春休み中にリクの弱点を探れってユメカからの指令をすっかり忘れてしまっていた。

「忘れてたの?」

「う、ん……」

「じゃ。そのまま忘れてようか」

いや。それじゃダメな気がする……

新学期、こりゃ血の雨が降ること間違いないだな。

ユメカの悪魔のような恐ろしい形相を思い浮かべると、身体が震えた。

「リクと別れたってこともきっと知られるよね」

ブルブルと震える身体を自分で擦る。

「俺たちが言わなきゃ分からないよ?」

「そう……だけど。リクは嫌じゃない?次の彼女できないよ?」

「リツは平気なんだ……」

「え?」

綺麗な箸使いでリクはお漬物を取ると、口の中でカリッといい音が鳴った。

「今は彼女とかいいかな……面倒見なきゃいけないお隣さんもいるし」

「あたしのせい?」

「俺はあのままリツと付き合ってたって良かったけど」

「はいはい。それもまたあたしのことからかってるんでしょ?」

何度もその手には乗りませんからっ!

握った箸をお漬物にブスッと刺して口の中で噛み砕く。


リクに新しい彼女が出来たらあたしはきっと……


泣く。


大号泣だなこりゃ~