どこまでも晴れ渡る空……そら……ソラ……


雲一つない青空に向かって、あたしは両手をあげて大きく伸びをした。




ん~今日はなんて気分のいいお天気なんだろ~





あたしの足取りは軽やかで、スキップをしてしまいそうなほど軽快だった。






いつものように昇降口の下駄箱に靴を乱雑に押し入れると、すでにもう二年近く履いているスリッパに手を伸ばす。


ホントはスリッパを出してから靴を入れれば良いということは分かっちゃいるが、長年の習慣というものは恐ろしく体に染みついていて、足元のコンクリートの上に落としたスリッパを見て小さなため息を漏らした。



まっ。犬のフン踏んだわけじゃあるまいし。いっか。



すっかり黒ずんだスリッパを足に装着すると、ため息を付いたことなど忘れたあたしは、ご機嫌で階段を上っていった。





教室に入ると、なにやら深刻そうな顔をした集団が目に入る。

あたしは自分の机に放り投げるように鞄を置くと、一目散にその集団に駆け寄った。



「奈緒子。今日も休みらしいよ。やっぱあのジンクスって本当だったんだね」


「ああ。あの女ったらし王子のことか」



あたしも集団の中で同じように深刻そうな顔をして、同じように頷いてみた。




「りっちゃん。なに呑気なこと言ってるの?これで送り込んだ調査員がもう三人餌食にされたんだよ!」

「え、餌食って……」


あたしがブッと吹き出すと、みんなの鋭い視線が一斉にこっちを向いた。




なんか。怖いんですけど?




「もう後がないからね。次……りっちゃんに潜入してもらうから」


「ふぇ?あ、あたし??」