ドキドキする胸を何とか鎮めたい私の手から、スッと抜き取られたバット。
「はい。こっち立って」
そのままヒョイヒョイと、手で“おいでおいで”をして私を呼び寄せた彼は、まるでゴルフをするように、先を下に向けたバットを私に握らせる。
「だから、手ぇ逆だって」
そう言って“くくくっ”と、噛み殺し切れていない笑いを漏らしながら私の手を直す彼に、少しだけ唇を尖らせた。
「ギュッて、雑巾しぼるみたいに握ってみ?」
「……こう?」
「そうそう。で、そのまま耳の横くらいまでグリップ上げんの」
「何か……」
「ん?」
「窮屈」
「あははっ!」
楽しそうに笑うけど、本当に窮屈だし。
「バットの先、もっと立てて」
意外とバット、重いし。
それでも、楽しそうに笑う彼を見ていたら、ついつい私の頬まで緩んでしまう。

